池黒羽黒神社
池黒羽黒神社の観音堂
七月三十一日
珍蔵寺 ── 矢ノ目 ── 池黒羽黒神社
 新山観音を発てば次の札所は宮内の長谷観音だが、巡礼路を大きく逸れてみた。織機川の流下に従って鉄路を南に渡り、池黒の羽黒神社へ向かう。 池黒でも随分南の矢ノ目地区。家並から少し離れて社叢が見えた。鳥居の前に並ぶ大柄な常夜灯は、近代が如何に直線的かを嘯く ... かつて置賜札所に連なっていた、池黒村の三堀観音の地である。明治に別当の法印が神職になった為、札所の番号だけが白鷹の高岡観音に譲られたと云う ...
 神社の創建は、別当の三堀寺が安永のころ火災に遭ってより詳らかでない。 その名の通り羽黒山の神霊を勧請して観世音菩薩を祀り、上杉家累代の崇敬をも受けたと伝える。明治十二年には郷社に列す ... 社地の傍に小橋を設けて、土蔵造の御堂が建っていた。その簡潔な外観が更に緑樹に囲まれて、しんみり時が止まった様に思える。 境内に寂れた気配は無く、小橋の袂の石柱には明快に「當国廿七番札所観世音菩薩」と刻んである ...
 石造物に散見する紀元二千六百年。草深い中に馬頭尊、一対の灯籠はまだ新しい。 格子から堂内を窺って暗さに目が馴れてくると、幕の隙き間から少しだけ、古色に落ち着いた菩薩の御顔が現れていた。三堀観音は坐像の千手観世音と聞いている。 金と彩色を装うて高く重ねた台座が物々しい。大権現の本尊としての役目は終えても猶威厳は衰えず。 資料には御詠歌あり、ありがたや大悲のめぐみふかければ 三堀なみもしつかなりけり ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■山形県神社庁『山形県神社誌』2000年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年

2019-08-29

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106