新山観音
新山観音 置賜第十八番
七月三十一日
芦沢観音 ── 寺坂峠 ── 新山観音 (珍蔵寺)
 靍布山珍蔵寺の始まりは寛正元年に遡る。米沢輪王寺の第二世、極堂宗三大和尚の開山による曹洞禅の寺。 仙鶴留毛伝軼事云々詠み上げて麓からひと登りすると、大きくはないが荘重な山門が現れる。檀家の人々か、境内の各処で掃除をしておられた ... 観音堂は山門へ向かわず、もうひとつふたつ登らねばならない。全く十年ぶりの参拝。 過日の夕暮れの景なぞ思い返しつつ、ふと足元を見遣ると、片方の靴底が盛大に剥がれている ...
 寶新山の額を掲げる仁王門。ずるずると大草鞋の間を抜けて新山の観世音にたどり着く。明和七年、商人の多勢吉兵衛が施主となって建立された観音堂。 樹木に囲まれた御堂が、正午前の陽光に映える。向拝の唐破風に天女あり ... 本尊は秘仏の聖観世音菩薩。柔らかい電燈に金色の御身を照らし、厨子の内で橋懸りに立つ。 足元には人知れず折鶴が留っていた。なにごともおもふこころはまるかれと むかしもいまもここはにゐやま ...
 徳一大師の作とも伝える観世音の謂れは、肝心な所でよく分からない。古くは別の真言寺院が別当だったとの話もある。 尤も明和の御堂建立より以前、既に珍蔵寺が預かっていた様だが ... 石の参道を戻らず、山道から御寺へ下りてみた。庫裡に朱印を請い、後ほど訪ねる長谷観音の分も合わせて頂戴する。 御礼と共につつが無く去るべきところ、靴の故障をあっさりと看破された。応急処置に腐心して頂き、ひたすら恐縮するばかり ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年

2019-08-25

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106