芦沢観音
芦沢観音 置賜第十七番
七月三十一日
菊田観音堂 ── 西大塚 ── 伊佐沢 ── 芦沢観音
 西大塚から更に北へ、松川橋より最上川を渡ると伊佐沢に入る。長井市の内だが、古くは東置賜郡の伊佐沢村。 西の市街は山に遮られて望めず、畑仕事の媼を時々見掛ける程度の静かな県道。 行くままに赤い幟が現れ、工場の傍の丁字路にさも新しそうな白い案内板と、背の高い石標が並んでいた。 表の意図はどちらもほぼ同じ、札所は是より東へ一キロと記す。石標は昭和三十二年の建立らしい。近くのバス停には芦沢口と書いてある ...
 別当雲洞庵には寄らず、札所観音堂の参道に相対す。あからさまに日当たりが良く、幅の広くない石段が、暗い杉林へ真一直線に伸びている。 奥まるほど傾斜は増し、見上げる先に朱塗りの御堂が待ち構えていた ... 芦沢観音の開創は詳らかならず、下伊佐沢の志釜掃部の屋敷で奉祀していた観世音が遷ってきたとは伝わる。 享保年間に御堂を新造。以降何度か修繕の記録があると云う。向拝の装飾には往時の絢爛な彩りが仄かに残る ...
 本尊は秘仏の十一面観音。祭壇の幕の下までお出ましの観世音立像は、空色の髪に彩色の衣を着けている。 金彩の冠に化仏が光り、その若々しげな面差しには、すっきり晴れ切らぬ気色が漂う。ちかひあれさかゆるよよのためしには なにわのこともよしやあしざわ ... 今回の朱印所は集落をもう少し入った所の御宅。屋敷周りの修繕に当たる人々は居たが、話の聞けそうな人は偶々留守だった。 玄関に用意してあった朱印一式を拝領 ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年

2019-08-21

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106