長谷観音
長谷観音 置賜第三十番
七月三十一日
池黒羽黒神社 ── 宮内熊野門前 ── 長谷観音
 靴底が危ういまま長い参道を歩むのも憚られ、熊野大社の参詣は日を改める事にした。 札所は長谷の観世音。迷はず民家が尽きた先に巡礼の幟を追う。大きな石灯籠の下に駐め、深緑の森を分つ石段を見上げる ... 観世音の起こりは慈覚大師巡錫の物語。宮内熊野権現とは切り離せぬ縁により、別当は熊野山内の寺が担ってきた。 明治に至り、当時の別当だった学頭代の台林院が神職となり、以後は門前通りの宝積坊が引き継いでいる ...
 朱色の二王門をくぐると途端に境内が開ける。南向きの観音堂に遠からず沢の音。正面の虹梁を飾る彫刻や軒の組物が、大柄な御堂を優美に見せる ... 飛騨の工匠が手掛けた御堂は火災で失われ、文政十年の再建時には上杉家が鬼門守護の為、行基御作の聖観音像を秘仏本尊として寄進したと云う。 堂内の白衣の観世音に、直江某の怪しからぬ俗伝の気配は無い。いつみてもかわらぬいろははせでらの こけもひかりてなほもますなり ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年

2019-09-02

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106