小豆森観音
小豆森観音
 六月十八日。上山巡礼五日目の最初は十四番、小豆森の観音岩。地理院地図では楢下宿の東に「岩観音」と記してある。此の標高三九五の小山が小豆森。 資料の通り「小笹村小豆森観音」と称するものの、久保川村や大門村の方が近い。小豆森または観音岩が小笹村分だったのか、その辺りは確かめていない... とにかく十三番楢下から近づくには、小笹の十九番を横目に、久保川の十八番を目の当たりにしながら、林道を上ってゆく...
 久保川橋を渡り、畑仕事中の翁に何気なく道を確かめたら、意外にも地理院地図とは別の道を教えてくれた。 小豆森を反時計回りに南縁の水路へ出る、その前にちょっと笹薮は越えるが「水場もあるよ」。上山名物「クアの道」のひとつなのだとか... 道程としては遠回りな上に、水路直前の笹薮は傾斜地で、真面目な巡礼者向きではない。しかし水路に沿うた小径は快適だった。水場の名前は「霊岩水」、断崖から水が染み出ている...
 「小豆森クアオルトコース」の指示標に従って山道を進むと、ふと堰堤を見下ろす頃、霊場に向かって一直線に急登させる百九十余の石段が出現... 観音岩は岩場から突出した所に屹立しており、足場は確かだが、両側切れ落ちた岩上を数歩行かねば触れられない。石像一帯は樹が茂って、資料写真ほど開けていなかった。 御詠歌、くちせじな岩のほとけに二世かけて 小笹わけつついのるこの身を。それで笹薮を越えさせられたのか...
 ひと休みの後、石像を辿って更に上へ進むと、すぐ地理院地図の点線に繋がった。こちらの山道も手入れしてあるが、林道との分岐には小さな追分石しか目印が無い。林道を少し下ると、寛政十三年の観世音菩薩碑が立っていた... 戻った時には先の翁の姿は無く、畑に会釈するばかりで橋を戻る。小笹村にあると云う遥拝の為の小堂については、尋ねる時間は有っても人が無く、今日の処は先へ行く。 以後の札所に薮越えは無いはず...
十三番 楢下 ←《上山三十三観音 十四番》→ 十五番 大門
■寺尾満『上山三十三観音』1998年

2016-06-20

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106