岩木観音
岩木観音
大石田駅---大橋---田沢---三ヶ瀬橋---戸沢小学校---岩砂橋---岩木観音---弥勒寺---県道二八五号---国道二八七号---慈恩寺大橋---羽前高松駅
 九月十日。最上巡礼九日、今日は岩木のみ。大石田から寒河江まで一挙に移動するが、前回に塩の沢を付け合わせた分、少し行程が短くなっているはず... 西部街道は広々とした田圃を直線に貫く。朝飯前のひと仕事に草を刈る姿も点々。横殴りの朝日を遮るものは何も無く、菅笠も役に立たない。電線伝いに鴉が二羽、入れ替わりながらしばらく先導されていた... 寛政の巡礼記は岩木に一泊した後で塩の沢の観音堂へ直行。最上川に寄らず、山道を行っている。富並にて鬼甲城址の堅固さに触れてあるものの、国道で緩慢に過ぎてしまう今、目も心も一面の蕎麦の花へ...
 長島橋と三ヶ瀬橋、連続して最上川を渡る。流れは西から東へ、東から西へ。岩と岩との間を幾筋も泡が止めどなく、浅瀬は鱗のように漣たつ。碧水が大旋回する岸は激しく削られて、ゆく小舟の影を想像するも覚束ない... 戸沢小学校では運動会の練習だろうか、子ども達が何度もラヂオ体操をしていた。何度もするようなものでも無さそうだが、指導が熱心と云う事か。運動が得手でない身には、あんまり思い出も無い... 旧道だけ歩ければ格好良いが、その為には食料は最初から担いで歩く必要がある。集落に店があるとは限らず、自動販売機しか無い事もある。時代劇で見るような茶店の機能は失われ、新道のコンビニに頼るのが現実...
 千座川を渡る前に国道を離れ、山手へ進む。車では当てずっぽうですり抜けている道も、徒歩では少々勝手が違い、分岐ごとに地図を確かめる。岩木の集落に入ってようやく札所への案内板あり。道の両側は洋花で飾られ、歓待気分に高揚するが、人影は無い... 正午を目前に慈眼院到着。先に朱印を頂戴し、観音堂でゆっくり休む事にした。手水は手押しポンプ。ひと押しした途端、ブヨが一斉にまとわりつく。安物の扇子で払い退けながら御堂に逃げ込む... 岩木の聖観世音。慈眼院は葉山大円院と関わりが深く、歴代住職には葉山別当職もいる。堂々たる御堂は平成の新築になり、素朴さは無くなった。時が経てばまた周囲の緑にも馴染むもの...
 去り際に独り巡礼と行き会うた。秩父巡礼を歩いた経験があるとか。問われて最上は多分三〇〇キロ超と答えたが、若松から札所順に庭月までならもっと短いかも知れない... 下り坂の勢いで弥勒院の奥の院へ寄るのを忘れてしまった。家並を過ぎて視界が開けると、いつの間にか龍山が見えている。正面の影は白鷹山。随分戻ってきた。いつ終わるとも知れないような徒歩巡礼、それでも構わぬような気がしつつあったのに... 御詠歌、よき道にすすめばすすむ世のならい 人の心は岩木ならねば。次は羽前高松駅から、十七番の長登へ。
十七番 長登 ←《最上三十三観音 十八番》→ 十九番 黒鳥

2014-09-11

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106