山形神室
五月二十六日
峠から国道を下っただけでくたびれた。夏日だと云うから用心で加えたボトルの麦茶が重い。
涼しげに沢を見下ろす山躑躅。頭の上まで迫り出す節理には、小滝が軽やかに響く。降りそそぐ若い緑。流れ落とす音も清しき岩清水。
鶯がよく通る声で頻りと題目を繰り返す。大滝の沢を離れて、小さくとも岩カガミの花の色は深かった。
古樹に並んで咲き揃う白ヤシオ。粗い岩肌を這い上がり、もっと手際が良かった筈だと何事も齢のせいにする
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仙人沢登山口 ── だんご平 ── 山形神室 ── 笹谷峠
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尾根筋の傍でボォボォと山鳩が啼く。ぶな林の小径に点々と出遭う掌ほどの糞。沢の源頭はヒトが付けた目印でやかましい。
剣呑な雪渓の先、風も通わぬだんご平。ひと串三粒では寂しさも止まず。いつしか淡く曇る空を、小型飛行機の可細い音が横切る。
仙台神室はカミ隠れ。リュックを担ぎ直して山形神室の標識を過ぎる。見詰めれば葉を震わせる白根葵。谷を満たした薄い雲の端が、東から県境を覆い始めた。
すれ違う誰もが霞んでゆく
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2023-06-02
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TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106