川井観音
川井観音 置賜第二十三番
十月二十四日
桑山観音 ── 木和田 盛興院 ── 川井観音 桃源院
 ひとつだけ寄り道した後、道路工事に弄ばれながらも、小山の麓の川井観音、和江山桃源院に着いた。 開山は天文十三年、未だ天文の大乱が収まらぬ頃。伊達家重臣の鬼庭良直が伊達郡茂庭から川井に拠点を移し、設けた寺だと云う。裏山は鬼庭氏の館であったとか ... 枯葉を震わせ木々が諸堂に懸かる。先ず高梨利右衛門供養の地蔵尊に黙礼。月夜燈に椿の花か。観音堂は古色に落ち着いて、近づくほどに正面の精緻な彫刻が広がる ...
 観世音は鬼庭氏旧領の縁起に関わり、桃源院開創に伴って伊達郡から遷されたと伝える。 観音堂については明和五年建立の棟札が残っており、火災に遭って安永に建て替えられたとも云う。今の御堂は弘化二年の再建 ... 十句経を唱え奉りつつ堂内を窺うと、金の衣を纏った観音像がお出ましであった。右に狐が守る小さな厨子、左の菩薩像は小さくて判じ難し。 ごくらくのはしよりみればはなのもり きぬぎぬやまはのどかなりけり ...
 向拝を振り返って鳥に麒麟に、波間に魚、葡萄の中には何かいる。賑やかな心地で頂いた朱印には、身代り聖観音、鬼庭左月開創、と記された。 鬼庭改め茂庭氏は慶長年間に大崎の松山に転じ、御寺も彼地に移って延命山桃源院となるが、川井の桃源院は此地の人々の御陰で消えずに済んだ ... 六面幢さえ名残り惜しければ、風ひと吹きに急かされて山門を辞す。御寺の南の小丘の、左月斎良直所縁とも聞く羽黒神社には寄らず仕舞い ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年
■米沢市教育委員会『米沢の神社・堂宮 9 上郷地区』2014年

2019-12-08

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106