宮崎観音
宮崎観音 置賜第二十八番
十月十日
自宅 ──東正寺門前 ── 赤湯駅 ── 宮崎観音 綱正寺
 盆休みのつもりで気が抜けた間、疾うに彼岸も過ぎてしまった。ふた月以上ぶりの置賜郡、各所の御開帳は今月末でお終い。 残る札所は十ばかりと云えども、処々番外地に寄り道しながらの道行きに焦慮少なからず ... 本日起点の東正寺の前、左足を軽く着いてから発す。通勤の混雑が引けた市街を離れ、程なく宮崎の端から家並に入る。 真っ直ぐな道の奥に、門柱と塀を構えた綱正寺が見えた。観音堂への参道は、境内の南側にある ...
 隙き無く敷かれた石の参道。地蔵尊が点々と、まだ暖かくない陽を受けて佇む。時季が合えば紫陽花の彩りも迎えてくれるのだろう。 参道の南は田畑と云うより草地茫洋として、最上川があるとも分からず ... 宮崎観音の起こりは延宝六年再建との記録だけで明らかでない。初め御堂は川向かいにあったが洪水の為に遷座し、後に別当職も綱正寺が引き継いだと云う。 以後も度々の風災火災を経て、只今の御堂は昭和七年の再建だとか ...
 御堂の聖観世音菩薩は伝教大師御作の秘仏と伝わる。堂内の御本尊の左右には、白く小さな菩薩像がたくさん並んでいた。 軒の梵鐘に記された誌を指でたどる。なみのおとみやざきてらのかねのこゑ にせあんらくとひびくなりけり ... 御寺の庫裡の玄関は一々施錠している。猫が隙を突いて出奔してしまうらしい。 朱印拝領の折も猫殿は扉に顔をくっ付けて、貧相な訪問者に呉れる一瞥も無かった。扉の開閉は御寺の指示に従うべし ...
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年
■置賜民俗学会『置賜の民俗 第20号』2013年

2019-10-13

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106