杉沢観音
杉沢観音 置賜第九番
五月十日
松岡観音 ── 畔藤神社 ── 杉沢観音
 思川を渡す赤い橋に仁王門を構える杉沢観音。車両は橋の前で下乗となる。門には大きな草鞋が掲げられ、左右に仁王像が控える。 ぱっちりと見開いた眼で実直そうな顔立ち。衣を彩る文様の線が柔らかい ... 伝える処の観音堂の始まりは大同に遡るが、明治三十九年の火災で御堂は全焼。しかし翌年には直ちに再建されたと云う。 平成に至っても仁王門や御堂の屋根改修などが進められたと云う。地元や崇敬の人々の尽力は弛まない ...
 明治の火災では本尊も著しく損傷し、現在拝観できるのは昭和二十七年に作られた聖観世音立像。 作者の長沼孝三を紹介する施設が、出身地の長井にあるとか。静謐な気配を纏う菩薩像。よのなかにつくりしつみはおもくとも ほとけのちかひたのむすぎさわ ... 小さな詠歌額を眺めていると、地元の人から声を掛けられた。彼此と立ち話を経て、朱印所の集会所に案内して頂く。 今日は地区の三人で、巡拝者の応対をしているらしい ...
 いつの間にかお茶に呼ばれ、ふきの煮物や漬物を勧められるまま頂戴する。残っても仕方が無いからと更に勧められ、意を決してみな食べてしまった。 室内に並んだ写真を順々に、昔は境内に大きな木があって云々、それぞれ懐かし気な会話が続く。 集会所は曾ての札所別当東漸寺の場所に設けられた。寺が無くなって、別当の名は畔藤の永泉寺が継いでいる ... 他にお客も訪れず、少しのんびりし過ぎたか。ともあれご馳走様でした ...
■白鷹町教育委員会『しらたかの歴史をたずねて』1981年
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年

2019-05-27

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106