松岡観音
松岡観音 置賜第二十九番
五月十日
高玉観音 ── 荒砥橋 ── 白鷹中学校 ── 松岡観音
 荒砥橋で最上川を渡る。バイパスを横切って山手へ向かうと、岡応寺の入口に、存外あっさりと着いてしまった。 三種類の行動食をひとつずつ頬張りながら、二つの参道を見遣る。勾配の急な明るい車道と、これまた急な木陰の山道 ... 山道は忽ち車道を見下ろし、観音堂のある高台へ直接上がっていた。開け放たれた御堂に入り、中央に坐する聖観世音を仰ぐ。 きのふまちけふまつをかにきてみれば あすのまよひもはるるけしきぞ ...
 西向福徳観世音とも称する松岡の観世音。神仏分離令を受けて、明治九年に宮内熊野大社から札所番号ごと引っ越して来た。 資料で昔の御詠歌を見ると、もうひとひねり事情がありそうな気もするが ... 御堂の傍の石仏は、西国一番の観世音のよう。道は更に上へ続き、点々と三十三観音が並んでいるらしい。 彫り目も新しげな如意輪尊には、観世音を迎え容れた御寺や地元の熱気すら感じる。捨てられる仏あれば、拾われる仏もあり ...
 御寺に下ると若いお坊さんがひとり、端坐して待っていた。何となくの清廉さに、やや緊張するのは性根の歪みか。 朱印拝領の後、本堂にて温かい麦茶を一杯頂く。地元の風物を紹介しつつ、巡礼者が暫時くつろぐ場を用意してあった。ささやかな菓子などには手を付けず ... 補陀山岡応寺は天正年間の創建を伝える曹洞の寺。茶の前に本尊釈迦如来に挨拶するのは、云うまでもない。 昼の陽射しは増すばかり、再び木陰の参道へ戻る ...
■白鷹町教育委員会『しらたかの歴史をたずねて』1981年
■長井市史編纂委員会『長井市史 第二巻 近世編』1982年
■後藤博『出羽百観音』1996年
■置賜日報社『置賜のお寺めぐり 3市5町の360寺総覧』2001年

2019-05-24

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106