安楽寺
安楽寺 中通り第十五番
六月三十日 / 真福寺 ── 高擶 ── 安楽寺
 景色に馴染まぬ外観の交通安全センターの信号交差点から北へ、高擶の町に入るところ、町の南西角に構える大寺が目に入る。 浄土宗の遍照山安楽寺。享徳三年に下荒谷で開かれ、後に高擶の城主に招かれて当地に遷ったと伝える。 盆の入りに講中が山寺奥の院へ登拝する、高擶夜行念仏の寺でもある。「よねぶつ」では参道入口の供養碑でも回向が行われると云う ... 立派な楼門に面喰らいながらも、ちょうど法要が終った処だった ...
 本堂と廊下で繋がった蔵が、札所観音の座敷。外から見ると本堂の右手前の蔵になる。祭壇中央の、朱の袈裟も美しい地蔵菩薩は、山形百八地蔵尊の一つ。 その右側に西国三十三観音、左側に最上三十三観音、いずれも安政年間の奉納と記す。並み立つ諸尊の仄かな威容。風土に秘めた力の様なものを感じずには居れない。 修復を終えたと云う最上三十三観音には精彩が甦る。むかしより立つともしらぬ今熊野 仏の誓ひあらたなりけり ...
 子を守る地蔵尊のそばにはいつもアンパンマン、は気の所為か。庫裡にひと声懸けて辞する処、勧められるままにお茶を頂戴した。 見崎の長泉寺へ取って返さねばと逸る気を、一服に宥める ... 高擶は中に入れば入るほど、道が複雑で迷いやすいのだとか。確かに地図が無いと、次の札所へは行き着けない感じもする。 それも城郭の名残りなのだろう。山門の内に渡る橋の下、美しく咲くと云う蓮は時が至らず、青々とした葉を広げる ...
■山形テレビ編『やまがたのお寺さん 第四集 −天童・東根・村山−』1980年
■大風印刷編『続・山形のお寺』2006年

2018-07-10

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106