下生居峰岸観音
七月四日。重要文化財の旧尾形家住宅の近くから集落に入ろうとすると翁が二人、歩道の縁石に腰掛けていた。
札所の事を尋ねてみると詳しく語って頂き、去り際に「ご利益あっから」と破顔で見送られる。従うて行くほど、ひとつひとつが的確な指示であった...
資料の絵地図もまた、良心的には大きく外れていない。ただ不忘園は不明、長い生垣の屋敷の事なのかも知れない。屋敷と屋敷の間に坂道があり、山の方へ上がってゆく...
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粗い舗装はすぐ絶えて、まもなく傍らの薮がぽっかりと開いたところ、釈迦牟尼仏と刻んだ碑から参道が始まる。
土に埋もれた石段を辿り、先程の軽トラ道の続きらしきを跨ぐ。頑丈そうな観音堂が現れた...
堂内を覗いても暗いばかりだが、うっすらと観世音の姿は拝した気がする。御詠歌、いわつつじいわでも知るや下生居 峰岸つづく花のゆふらく...
県道に戻った頃には翁の姿も無く、縁石に小声で礼を述べて宮脇村へ急ぐ...
■寺尾満『上山三十三観音』1998年
2016-07-07
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TOM
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