三河村観音
三河村観音
羽前山辺駅---三河村観音
 九月二十日。最上巡礼十一日の一つ目。駅舎の朝は肌寒かった、もう涼しいとは云わない。長袖を常時携行すると云えど、格好は猛暑の頃と同じ。逐一日帰りであっても、初日から基本を変えないのは硬直した謹厳か... 幼稚園前の畑で朝仕事の人あり。快活とした挨拶に、ぼんやり残った眠気がつらい。行く手を白い猫が横切るも、杖の鈴の音に一歩分だけぴたりと止まった。軽く会釈した隙に、何処かへ消えてしまったが... 三河村観音は常福寺の境内にある。別当の常福寺は正保の開山と云われるが、札所本尊の秘仏聖観世音は若松観音と同木で行基の作と伝える。詳細は寺の火難により不明であり、すぐ前の須川の氾濫にも悩まされたであろう事は想像に難くない...
 まだ誰の姿も無い。観音堂の鐘より、開けた扉のきしむ音の方が辺りに響く。朝の光は障子越しに柔らかい。御前立の尊像を仰ぎ見て、ぽつぽつと読経を始める。ようやく頭が、静かに冴えてきた... 大杉の黒い影。本堂の呼鈴にて間もなく老僧が現る。ゆっくりとした所作で朱印を捺し、こちらが境内を曲がって見えなくなるまで合掌で送って頂いた。深々と静まった気配に振り向いて、背筋が伸びる心地... 御詠歌、いづいるや月のゆくゑも三河村 鐘の響きに明くるしののめ。次は反田観音を経て城山を目差す、十二番の長谷堂へ。
十二番 長谷堂 ←《最上三十三観音 十三番》→ 十四番 岡村

2014-09-20

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106