六沢観音
八月五日。最上巡礼四日の三つ目。まず自動販売機で缶珈琲を買っておく。巡礼では千円札を崩して百円玉を貯めておかねばならない。納経所でお釣り頂戴は無調法...
善法寺や金城寺の前を過ぎ、旧道を通っているつもり。常盤トンネルを抜ければ、六沢観音の円照寺は目前。次の札所が近いと云うだけで、歩みが滅法早くなる...
六沢観音は当初、延沢城の北西の麓にあり、傍らの観音寺が別当を務めた。寛政の巡礼記に拠れば、延沢龍護寺から「寺の裏山を越へ」て六沢観音に向かっている。山中に仙人清水
(※)が有るとも記し、廃城後の古城山をまともに越えたのかも知れない...
後に観音寺は廃れ、野辺沢氏所縁の円照寺が別当を引き継いだ。観音堂を境内に移したのは昭和五十二年。親に連れられ初めて参拝した頃は、道路の向かい側に旧地への鳥居が残っていた...
ひと通り勤めを果たして本堂の前で休んでいると、西瓜を一片頂いた。何よりありがたく、遠慮無くかぶり付く。そう云えば、西瓜は今年初めて...
御詠歌、いまここに御法のふねの折をえて のちの世までも浮かぶなりけり。次は銀山温泉の手前、二十四番の上の畑へ。
■ (※) 仙人清水は原文ママ。正しくは天人清水(天人水)の事だろう。