下関根観音
下関根観音
 六月三日。細谷春光院から細道を北上、赤に黄に実を光らせるさくらんぼ畑を突き抜けて、関根不動尊の南の信号交差点にぽんと出た。古い道の様な、農道だったのかも知れない... 出た処は羽州街道、上山市街から南を別して七ヶ宿街道と呼ぶ。札所は街道筋の裏の、青苗の風にそよぐも長閑なる水田地帯の中。少し園地に整えてある。背景の葉山が頼もしい... 御堂に掲げられた大正時代の詠歌額には「沢田観世音」と記される...
 本尊は魚の背に乗った聖観音、魚籃観音とされる。たくさんの千羽鶴が、濃密な信仰の気配を漂わせる。御詠歌、めぐり来てつれまつ下の関の根に みのりとくとく聞くほととぎす... 御堂の傍には上山巡礼の碑や小さな石像石祠が並ぶ。シーソーにそっと腰掛けてみたが、誰も居らぬからと云うて落ち着かない... 本日は此処まで。ゆくゆく彼方に望む番城山の麓まで行くのかと思うと、道程はまだ長い。次回は相生、中関根から...
八番 細谷 ←《上山三十三観音 九番》→ 十番 中関根
■寺尾満『上山三十三観音』1998年

2016-06-07

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106