川口いわや観音
川口いわや観音
 六月三日。上山巡礼の三日目は、六番の出直しから。適当に聞いた話では、 前川ダムへ向かう道路から札所の観音へ行く農道、農地だった一帯が、山形二市二町の新たなごみ焼却施設予定地になったのだとか... 目下まっさら更地にしてあるだけで、何の作業もしていない。工事の看板も人も重機も草木の一本も無く、建設反対の旗が並んで翩翻。 敷地の端に鳥居までの舗装路を付けてくれている様だが、普段に立入禁止では使えない...
 鳥居を含めて観世音の岩場は工事範囲でない。立入禁止を犯さず、線路にも侵入せず、仕方が無いので前川ダムの駐車場から薮に入る... 鳥居の周りこそ茫茫ながら、観世音は荒んではいなかった。石段の横に踏み跡があるような、無いような。祠には新しい紫の幕が懸けられ、カップ酒が二つ供えてある。先ず合掌... 石灯籠の傍の菩薩像は地蔵尊。鳥居から眺めると、道路が益々近く感じる。そちらへ抜けられぬのがもどかしい...
 急峻な斜面の一処に岩が重なり集まって、名前の通りの岩屋を成す。其処に観世音が祀られたと云う事か。 資料に拠れば、かつては仏師銘入りの本尊が納められてあったらしい。御詠歌、なにごとのおわしますらん音もせぬ 岩やがうちになみだこぼるる... 帰路は短絡を謀って却って密林に捕まり、ひとり乱闘の態で元の地点まで戻った。次に来る時は道路から参拝できますように。笹の葉に打たれた跡も滑稽なまま、小穴へ向かう...
五番 川口若松 ←《上山三十三観音 六番》→ 七番 小穴
■寺尾満『上山三十三観音』1998年

2016-06-04

TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106