正厳の御所神社は乗車のまま黙礼、朝からの薄い霧雨もようやく止んだ。程なく県道沿いの東照寺に至る。 丁度家並みも切れて、車両はただ漫然とすっ飛ばして通過する辺り。最上歩きの折は山刀伐峠を前にして余裕無く、道路から一礼するに留めた覚えがある。 道の傍には稲荷神社。少し奥まって位置する山門へ歩み掛けて、ふと見上げると高台に観音堂と思しき一宇あり。 稲荷社の石段と相い対して、やや長めの石段が真っ直ぐに登っている . . . 天正年間の開山とする曹洞宗の横澤山東照寺。その前身は岩谷沢にあった寺で、故地に残る薬師堂は慈覚大師所縁であると云う。 御寺の観音堂は文政十二年の再建。扁額は悲慧山。長年の風雪に耐えてきた朱塗りの外観。 朱は堂内にも及び、格天井の繊細な絵には独特な源氏香図が描き込まれている。内陣に並ぶ三十三観音や古色然とした菩薩像。 尾花沢大石田の二十三番、おもくともつみにはのりのかつをでら　ほとけをたのむみこそやすけれ . . . 西国霊場の石仏が御堂を囲む。庫裡を訪ねると、実は観音堂の御本尊が本堂の方に安置してあるとの由。入堂して尊像を拝す。 観音堂の元の本尊はかなり以前に盗難で失われ、爾来堂内の観音像の一つを代役としていたが、 現在の住職の下で平成二十五年、新たな千手観音坐像の開眼が成ったとか。 急な石段を登降するより本堂鎮座の方が、観世音も参拝者も安心か。一隅に慈覚大師御作の薬師如来。 近年は新西国の大祭も行われていないらしい . . .