いまし月の御山に
八月五日
麓の河川や道路には先週の大雨の痕が生々しく、それでいて小屋跡辺りの沢は何事も無く流れていた。
後で聞けば姥沢は、増えも濁りもしなかったとか。詰所の翁は謎だ不思議だと声を低くする
...
朝駆けならば涼しかろう、人も少なく閑かだろう、その程度の浅慮は悉く裏を掻かれ、面立ち佳い日光きすげの前には、既に数人が写真機を玩ぶ。
氷塊は道より遥かに遠ざかり、ただ足取り重く、チングルマの笑みにも渋い眉間で応える
...
月山 (姥沢往復)
#
風が鳴る鍛冶稲荷。桃青句碑にて上着を羽織る。今季開業が遅れている頂上小屋の張紙を読み通し、思わしくない現実に引き戻される。
先行の姿はおよそ、山頂に至る事無く広場へ去るこそ不思議の沙汰と覚ゆれ
...
神垣の内は持参のマスクを着ける。疫病対策か神職が少ない。駒兎より御裏を巡り、薄く重なる雲の果て、何処にも鳥海の影は無し。
朗々たる祖霊供養の詞に頭を垂れる。肩の荷が下りた心地に、遅かりし夏山の始まり
...
■
2020-08-10
previous . . .
TOM
ぽんとけりゃにゃんとなくよーいよい
@rondino2106